テナントの造作譲渡料とは?居抜き店舗を契約する前に確認したい設備・費用・注意点
はじめに|「造作譲渡料○○万円」は何のお金?
飲食店や美容室などの居抜き物件を探していると、募集条件の中に、
「造作譲渡あり」
「造作譲渡料○○万円」
「店舗設備一式譲渡」
といった表記を見かけることがあります。
通常の賃料や保証金とは別にまとまった金額が記載されているため、
「これは誰に払うお金?」
「払えば店内にある設備は全部自分のものになる?」
「造作譲渡料は値下げ交渉できる?」
「故障していたら誰が修理する?」
「退去するときに次の人へ同じように譲渡できる?」
など、疑問を持つ方も多いでしょう。
造作譲渡は、うまく活用できれば内装工事や設備導入の負担を抑えられる可能性があります。
一方で、店内に残っているものを十分に確認せず、
「居抜きだからお得そう」
という理由だけで契約すると、開業前に想定外の交換費用や撤去費用が発生することがあります。
大切なのは、造作譲渡料の金額そのものではありません。
何を引き継ぐのか、その設備を本当に使えるのか、誰の所有物なのか、そして最終的にいくらかければ営業を始められるのか。
ここまで確認して判断する必要があります。
この記事では、貸店舗を探している方に向けて、造作譲渡の基本から、居抜き物件で確認したい設備、契約前のチェックポイント、退去時の注意点まで分かりやすく解説します。
※造作譲渡の内容、契約方法、設備の所有関係、修理・撤去負担等は物件や契約によって異なります。実際の契約では、賃貸借契約書、造作譲渡に関する契約書・合意書、設備一覧などを確認してください。
造作譲渡とは?
造作譲渡とは、店舗内に設置されている内装や設備などを、現在の所有者から別の事業者へ引き継ぐことをいいます。
居抜き店舗では、前のテナントが使用していた、
-
厨房機器
-
カウンター
-
テーブル・椅子
-
照明
-
空調
-
給排水設備
-
ダクト
-
フード
-
看板
-
棚
-
シャンプー台
-
パーテーション
-
その他店舗設備
などが残っていることがあります。
その一部または全部について、前テナントなどから新しいテナントへ譲渡するケースがあります。
その対価として設定されるのが、一般に「造作譲渡料」と呼ばれる費用です。
ただし、
店内に残っているもの=すべて造作譲渡の対象
とは限りません。
この点が非常に重要です。
貸主が所有している設備もあれば、前テナント所有の設備、リース会社所有の機器、単なる残置物などが混在していることがあります。
見た目だけでは判断できないため、一つずつ確認する必要があります。
造作譲渡料は「物件を借りる費用」とは別に考える
貸店舗を契約する場合、通常は物件に関する費用として、
-
保証金・敷金
-
礼金
-
前家賃
-
共益費
-
仲介手数料
-
保証会社費用
-
保険料
などが必要になることがあります。
造作譲渡料が設定されている場合は、これらとは別に費用が発生することがあります。
例えば、
「賃料が予算内だから契約できそう」
と思っていても、造作譲渡料や設備修理、追加工事まで計算すると、想定より開業費用が大きくなることがあります。
そのため居抜き物件では、
家賃+契約初期費用+造作譲渡料+追加工事費+設備修理・交換費
まで含めて判断することが重要です。
造作譲渡と「居抜き」は同じ意味?
似ていますが、必ずしも同じ意味ではありません。
「居抜き」は、前の店舗で使用されていた内装や設備などが残った状態の物件を指す際に使われる言葉です。
一方、造作譲渡は、その造作や設備などを別の人へ譲り渡すことを指します。
つまり、
「居抜き物件だから必ず造作譲渡料が必要」
とは限りません。
反対に、居抜き状態で募集されていても、
-
無償で残されるもの
-
有償で譲渡されるもの
-
貸主の設備
-
使用できるが所有権を取得しないもの
-
撤去予定のもの
などが混在していることがあります。
募集図面の「居抜き」という言葉だけで判断せず、具体的な内容を確認しましょう。
造作譲渡料を払えば店内の設備は全部もらえる?
必ずしもそうではありません。
造作譲渡料が設定されている場合でも、何が譲渡対象なのかを明確にする必要があります。
例えば厨房内に、
-
冷蔵庫
-
冷凍庫
-
製氷機
-
ガスレンジ
-
フライヤー
-
食器洗浄機
-
作業台
-
シンク
-
ダクト
-
グリストラップ
-
エアコン
が残っていたとします。
しかし、そのすべてが前テナントの所有物とは限りません。
一部がリース契約中であったり、貸主所有の設備だったりする可能性があります。
そのため造作譲渡を検討するときは、少なくとも、
「何を、誰から、どのような状態で譲り受けるのか」
を一覧にして確認しましょう。
造作譲渡で最も重要なのは「所有者」の確認
居抜き店舗を見ると、どうしても設備の状態や見た目に目が行きます。
しかし、契約上は「誰のものなのか」が非常に重要です。
前テナント所有
前テナントが購入した設備であれば、造作譲渡の対象になる可能性があります。
貸主所有
建物設備として貸主が所有している場合があります。
この場合、新しい借主が造作譲渡によって所有権を取得するものではありません。
リース会社所有
厨房機器や業務用設備の中には、リース契約で導入されているものがあります。
前テナントが使用していたからといって、前テナントが自由に譲渡できるとは限りません。
残置物
設備が室内に残っていても、貸主が設備として性能を保証しない「残置物」として扱われている場合があります。
残置物の修理・交換・撤去について誰が負担するのかは、契約条件を確認する必要があります。
造作譲渡契約では設備一覧を作る
造作譲渡を行うのであれば、対象物をできるだけ具体的にしておくことが重要です。
例えば、
「厨房設備一式」
という表現だけでは、後から認識の違いが生じる可能性があります。
可能であれば、
-
メーカー
-
製品名
-
型番
-
台数
-
設置場所
-
所有者
-
リースの有無
-
動作状況
-
譲渡対象か否か
などを整理します。
写真を残しておく方法もあります。
特に高額な業務用設備については、どの機器が対象なのかを確認しておきましょう。
造作譲渡料は高い?安い?
造作譲渡料の金額だけを見て、
「高い」
「安い」
と判断することはできません。
造作譲渡料が高く見えても、新たに同等の厨房設備、排気設備、空調、内装などを整えるより総額を抑えられるのであれば、事業計画上は合理的な場合があります。
反対に、造作譲渡料が低くても、
-
冷蔵庫が故障している
-
空調交換が必要
-
ダクト能力が不足している
-
給排水工事が必要
-
内装をほぼ撤去する
-
不要設備の処分費がかかる
といった状態であれば、結果的に費用負担が大きくなることがあります。
比較すべきなのは造作譲渡料そのものではなく、
その店舗を自分の業態で営業できる状態にするまでの総額
です。
造作譲渡料は交渉できる?
造作譲渡の条件は案件ごとに異なるため、価格について相談できるケースもあります。
ただし、必ず値下げできるわけではありません。
前テナントが設定した希望金額、設備の状態、撤退時期、次の入居者を探している期間など、さまざまな事情があります。
価格だけを交渉するのではなく、
「この設備は使用しないので譲渡対象から外せないか」
「故障している機器についてどう扱うか」
「不要設備を撤去した状態で引渡せるか」
など、条件全体で整理した方がよい場合もあります。
居抜き物件の設備は必ず動作確認する
造作譲渡で特に注意したいのが、設備の状態です。
見た目がきれいだからといって、正常に使用できるとは限りません。
例えば飲食店なら、
-
冷蔵庫
-
冷凍庫
-
製氷機
-
食器洗浄機
-
ガス機器
-
給湯器
-
エアコン
-
換気扇
-
ダクト
-
排気ファン
などがあります。
電源が止まっている店舗では、その場で動作確認できない設備もあります。
また、正常に動いていても、開業後すぐに故障する可能性はあります。
中古設備を引き継ぐ以上、
「現在動くか」
だけではなく、
「いつ導入されたものか」
「修理可能な機種か」
「交換するとどの程度費用がかかりそうか」
まで考えておくことが重要です。
「設備がある」と「自分の業種で使える」は別
居抜き店舗では設備が充実しているほど魅力的に見えます。
しかし、既存設備が自分の営業内容に合っていなければ意味がありません。
例えば同じ飲食店でも、
-
カフェ
-
ラーメン店
-
焼肉店
-
居酒屋
-
ベーカリー
-
洋菓子店
では必要な設備が異なります。
確認したいのは、
-
ガス容量
-
電気容量
-
給排水
-
排気
-
ダクト
-
空調
-
厨房面積
-
グリストラップ
-
客席数
-
搬入動線
などです。
既存設備があるからといって、そのまま希望する業種で営業できるとは限りません。
有力な物件では、可能であれば契約前に施工会社や設備業者にも確認してもらいましょう。
美容室・サロンの居抜きも設備確認が重要
造作譲渡は飲食店だけの話ではありません。
美容室やサロンなどでも、
-
シャンプー台
-
セット面
-
給排水
-
給湯設備
-
空調
-
照明
-
受付カウンター
-
洗濯機置場
-
バックヤード
などを引き継ぐことがあります。
特に給排水設備は、レイアウト変更によって追加工事が必要になることがあります。
設備が残っていても、自分が予定している席数やサービス内容に適しているとは限りません。
見た目の完成度だけでなく、営業に必要な性能を確認しましょう。
造作譲渡があっても貸主の承諾は別に確認する
前テナントと造作譲渡について話がまとまったとしても、それだけで物件へ入居できるとは限りません。
建物を借りるためには、貸主との賃貸借契約が必要です。
貸主側で、
-
新しい借主の入居審査
-
業種の確認
-
営業時間の確認
-
内装工事の確認
-
看板の確認
-
保証会社の審査
などが行われる場合があります。
つまり、
造作譲渡の話と、物件を借りられるかどうかは分けて考える
ことが重要です。
造作譲渡の契約を先行させる場合には、賃貸借契約が成立しなかった場合の扱いについても確認しておく必要があります。
営業許可などはそのまま引き継げるとは限らない
前テナントが飲食店として営業していたからといって、新しい事業者がそのまま営業を開始できるとは限りません。
営業内容によっては、保健所、消防、その他の行政手続きや確認が必要になる場合があります。
また、
「前も飲食店だった」
という事実だけでは、
「今回予定している飲食店も問題なく営業できる」
とは言えません。
業態が変われば、
-
調理方法
-
火気設備
-
排気量
-
客席
-
レイアウト
-
営業時間
なども変わります。
具体的な物件が決まったら、住所、業種、レイアウト、設備内容をもとに必要な確認を行いましょう。
造作譲渡と原状回復は必ずセットで確認する
居抜き物件で最も注意したいポイントの一つです。
「居抜きで借りたのだから、退去時もそのままでいい」
とは限りません。
契約内容によっては、居抜き状態で入居した場合でも、退去時には内装や設備を撤去し、スケルトン状態など契約で定められた状態に戻す必要があります。
例えば譲り受けた、
-
厨房
-
カウンター
-
ダクト
-
空調
-
看板
-
間仕切り
-
給排水設備
などについて、退去時に撤去費用が発生する可能性があります。
造作譲渡料を支払って取得した設備でも、
取得したことと、退去時に残してよいことは別問題
です。
契約前に必ず原状回復条件を確認しましょう。
次のテナントへ造作を譲渡すれば退去費用を抑えられる?
可能性はありますが、前提にしない方が安全です。
退去するときに、次の入居希望者へ店舗設備を譲渡できれば、撤去負担を抑えられることがあります。
しかし、
-
次の借主が見つからない
-
次の借主が設備を必要としない
-
貸主が居抜きでの引継ぎを認めない
-
設備が古く価値が低下している
-
契約上スケルトン返しが必要
といった可能性があります。
「退去するときは造作を譲渡すればいい」
という想定だけで収支計画を組むのは避けた方がよいでしょう。
最悪の場合には、自分で撤去・原状回復を行う可能性まで考えておくことが重要です。
「造作買取請求権」と造作譲渡は別の話
ここは混同しやすいポイントです。
借地借家法33条には「造作買取請求権」が定められています。
建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した造作などがある場合、建物賃貸借が期間満了または解約の申入れによって終了するときに、一定の条件のもとで賃借人が貸主に対し、その造作を時価で買い取るよう請求できる制度です。
これは、前テナントから次のテナントへ設備や内装を引き継ぐ「造作譲渡」とは別の制度です。
そのため、
「自分がお金をかけて設備を設置したから、退去時には必ず貸主が買い取ってくれる」
と考えるのは適切ではありません。
実際の退去条件や造作の扱いについては、賃貸借契約書や特約を確認してください。
造作譲渡付き物件を内見するときのチェックリスト
居抜き店舗を内見するときは、室内の雰囲気だけでなく、次の項目を確認しましょう。
譲渡対象
-
何が譲渡されるのか
-
譲渡対象外の設備はあるか
-
貸主所有設備はどれか
-
リース品はないか
-
残置物はどれか
設備
-
メーカー
-
型番
-
年式
-
動作
-
故障
-
異音
-
漏水
-
錆
-
汚れ
-
メンテナンス履歴
インフラ
-
電気容量
-
ガス容量
-
給水
-
排水
-
給湯
-
空調
-
換気
-
排気
店舗運営
-
客席数
-
厨房動線
-
搬入経路
-
ごみ置場
-
看板位置
-
営業時間
-
周辺への音・臭い
契約
-
造作譲渡料
-
支払時期
-
賃貸借契約が成立しなかった場合の扱い
-
修理負担
-
撤去負担
-
原状回復
-
退去時の設備の扱い
一度の内見ですべて判断する必要はありません。
候補として有力になった段階で、設備業者や施工会社などと再度確認する方法もあります。
造作譲渡料を支払う前に確認したい10項目
最終的には、最低でも次の10項目を整理しておきましょう。
-
誰から造作を譲り受けるのか
-
何が譲渡対象なのか
-
各設備の所有者は誰か
-
リース品が含まれていないか
-
設備は正常に使用できるか
-
修理・交換が必要な設備はないか
-
自分の業種に必要な能力を満たしているか
-
造作譲渡料以外に必要な工事費はいくらか
-
退去時の原状回復条件はどうなっているか
-
賃貸借契約が成立しなかった場合の造作譲渡の扱いはどうなるか
造作譲渡料だけを見るのではなく、この10項目をまとめて確認することが大切です。
造作譲渡付き居抜き物件でよくある質問
Q1.造作譲渡料を払えば、店内の設備は全部自分のものになりますか?
必ずしもそうではありません。
譲渡対象となる設備を個別に確認する必要があります。
貸主所有設備、リース品、残置物などが混在している場合もあるため、設備一覧や所有関係を確認しましょう。
Q2.造作譲渡料とは別に敷金や保証金も必要ですか?
必要になる場合があります。
造作譲渡料は、賃貸借契約で必要になる保証金・敷金、礼金、前家賃などとは別の費用として扱われるケースがあります。
物件取得に必要な総額を確認してください。
Q3.造作譲渡料は値下げ交渉できますか?
案件によっては相談できる場合がありますが、必ず交渉できるとは限りません。
金額だけでなく、譲渡対象設備や不要設備の撤去なども含めて条件を確認するとよいでしょう。
Q4.壊れている設備があった場合、前テナントに修理してもらえますか?
契約内容によって異なります。
中古設備を現状のまま引き継ぐ条件となっている場合などもあるため、譲渡前に設備の状態と故障時の扱いを確認しておくことが重要です。
Q5.居抜きで借りれば内装工事は不要ですか?
必ずしも不要ではありません。
既存レイアウトや設備が自分の業態に合わなければ、内装、電気、給排水、空調、排気などの追加工事が必要になる場合があります。
Q6.前の店が飲食店なら、新しい飲食店もそのまま営業できますか?
そのまま営業できるとは限りません。
営業内容や設備、レイアウトなどによって必要な許可・届出・確認が異なる場合があります。
具体的な計画に基づいて、必要に応じて行政機関や施工会社等へ確認しましょう。
Q7.退去時に次のテナントへ造作を譲渡することはできますか?
可能な場合もありますが、必ずできるとは限りません。
貸主の承諾、賃貸借契約、次の入居者、造作の状態などによって異なります。
退去時の原状回復義務も含めて確認してください。
まとめ|造作譲渡料ではなく「開業できる状態までの総額」で判断する
造作譲渡付きの居抜き物件は、既存の内装や設備を利用することで、開業に必要な工事や設備投資を抑えられる可能性があります。
しかし、
「設備がたくさん残っている」
「造作譲渡料が安い」
というだけでお得とは判断できません。
確認すべきなのは、
-
譲渡対象
-
設備の所有者
-
リースの有無
-
設備の状態
-
自分の業種との適合性
-
修理・交換費用
-
追加工事
-
賃貸借契約との関係
-
原状回復
-
退去時の扱い
です。
特に重要なのは、
造作譲渡料+追加工事+修理・交換費まで含めて、実際に営業を始められる状態にするまでいくら必要なのか
を確認することです。
新品で一から店舗を作る場合と、居抜き設備を利用する場合の総額を比較して判断しましょう。
居抜き店舗・貸店舗を探すなら「テナントサガス」
テナントサガスでは、店舗・事務所などの事業用テナント物件を掲載しています。
居抜き物件を探すときは、立地や賃料だけでなく、
-
造作譲渡の有無
-
設備
-
契約条件
-
業種
-
必要な工事
-
開業までの総費用
まで確認しながら比較することが大切です。
「居抜きで開業費用を抑えたい」
「この設備をそのまま使えるか確認したい」
「スケルトンと居抜きのどちらが自分に合うか分からない」
という場合は、希望エリア・業種・予算・必要な広さ・開業時期などを整理したうえで物件を探してみましょう。
見た目の「居抜きのお得感」だけで決めず、契約から開業、そして将来の退去まで考えて、自分の事業に合ったテナントを選ぶことが重要です。